鬼平犯科帳を聞き、読みました
池波正太郎氏の『鬼平犯科帳シリーズ』のうち、CD版の「本所・桜屋敷」を聞き、同作品がamazonのkindleでも無料版が有ったので読みました。
この作品では、長谷川平蔵の生い立ちと出生がわかり、平蔵の親友である明智左馬之助のことにも触れられます。
男というものは、恋い慕った女性をいつまでも忘れないもののようです。
本作品では本所の桜屋敷にいる「ふさ」という女性が登場します。
ふさは、二人にとっては心から恋い慕う対象であり、青春そのものであったのです。
しかし、二人の思い空しく、ふさは他家へ嫁に行ってしまうのでした。それがふさの幸福になるのであれば、仕方がないと、自らの心を慰めつつ…。
それから20年経ち、結局ふさは、不幸な生活を送ってしまうこととなります。
様々な経緯を経て犯罪を企むこととなったふさは、お白洲で平蔵と左馬之助を一瞥するのですが、結局二人に気が付かず、遠島を申し渡されてしまうのでした。
平蔵は作品の終盤で、「女という生き物は、過去もなく将来もなく、ただ現在の我が身あるのみ、ということを忘れていた」と語りますが、その言葉は、なんとも現実的で物悲しく響きます。
20年も前に別れることとなった女性をひたすらに一途に想い続けた左馬之助の涙を、平蔵は心から心配するのでした。