新藤兼人監督の作品「裸の島」を観てきました
南大沢にあるTOHOシネマズで、「午前十時の映画祭」という企画が行われています。
といっても、今年で9年目だから、比較的知られている催しなのではないでしょうか。
毎年4月から1年間、選定委員によって選出された珠玉の名作映画が
1~2週間の上映期間で、劇場で鑑賞できる貴重な機会です。
そんな映画祭を昨日、初めて観てきました。
作品は、2012年に亡くなられた新藤兼人監督の代表作とも言われる「裸の島」。
「孤島に生きる一家の日々を一切のセリフなしで描いた驚くべき作品」
という案内で観ましたが、感想としては、非常に良かったです。
あらすじとしては以下のような内容です。
瀬戸内海に浮かぶ小さな離島に住んでいる家族4人。
島には水がなく、生活用水を使うにも、畑で使う水を使うにも、舟を漕いで、
別の島にある水を汲みに行かなければなりません。
と言っても汲みに行くのは手動の舟。
水を運べるのも、夫婦2人がそれぞれ天秤棒の両端に下げた桶2つに汲んだ分だけ。
2人がそれを抱えて、また舟に乗り、一部は生活用水とし、
残りは乾燥していた土の畑に撒くのでした。
そんな単調な生活の中で、息子2人は島で料理を作ったり、家畜の世話をしています。
加えて長男は学校へ行き、次男は周囲の海で魚を採る、
そうやって家族で一体になって生活しているのでした。
と言っても現代と違い、インターネットもテレビもラジオもない世界。
生活に大きな変化などあるはずもなく、ただただ淡々と淡々と同じような生活を
繰り返しているのでした。
そうした生活に訪れる細やかな幸福と大きな不幸、主人公である妻(乙羽信子さん)と
夫(殿山泰司さん)の表情や動きが、時に激しく、時に喜ばしく見え、
時にエロティックでもあり、見事な作品です。
ただ淡々と淡々と生きる大切さと美しさと力強さと哀しさに、気持ちを向けられます。
基本的にはサイレントムービーですが、水の音や秋の祭りの音、妻が嗚咽する声など、
要所要所で肝心な音声が流れるので、それも作品の魅力です。
作品に流れる音楽も、これまた単調でありながら、重々しく、時に哀しく、見事に奏でられます。
一見、単調な場面もあるのですが、代わり映えのない生活を予見させているようで、
かつ野心的な作品に仕上がっていました。
音や色に溢れた現代映画では見られない魅力が豊富で、非常に良かったです。
こうした生活によって生きてきた過去の私たちを想わされます。
1960年に上映された本作品を見た当時の人々の感想も聞きたいと思いました。
あなたの人生の主人公はあなた。
今日も素晴らしい一日でしたね。
明日も素晴らしい一日を過ごしましょう。
お互い、頑張りましょうね。
では、また。